『マネーボール』から学ぶ「勝利条件定義→戦略策定→KPI設計」

本や映画で有名な『マネーボール』を読み、KPI設計の考え方について改めて考えさせられることがありました。

これまで私は、「クライアントの事業が成長するための意味のあるKPI設計重要」ということは理解していたつもりでした。しかし、「クライアントが市場の競争に勝つためにはどんな条件が必要なのか」という視点でKPI設計ができていませんでした。つまり、3C分析のうちの自社(Company)しか見れておらず、競合(Competitor)や市場(Customer)を踏まえたKPI設計ができていなかったのです。このことを『マネーボール』を読むことで痛感し、「浅い支援をしてしまっていたかもしれない…」と反省しました。
同じ反省を繰り返さないよう、また、山口周さんのツイートの内容も参考に『マネーボール』から得たエッセンスであるKPI設計の前のゲームの勝利条件を定義した上での戦略策定の重要生をまとめていきます。

ゲームの勝利条件を認識した上で、戦略を決め、KPIを設計する

マネーボールでは下記の流れでKPIを設計していました。

1. ゲームの勝利条件を認識する

野球のルール上、勝利条件は「相手チームに27個のアウトを取られる間に、相手より多く得点する」ことです。相手よりたくさんホームランを打ったり、160kmの豪速球を何球も投げ込んだりしても、上記の条件を満たさないと勝つことはできません。例えば、大谷翔平選手が二刀流の大活躍をしても、相手チームよりも多く点を取れなければ試合には負けてしまいます。これは少年野球からメジャーリーグまで共通です。

当たり前のようなことと思えますが、この勝利条件を具体的に認識することがその後のKPI設計において非常に重要になります。

2. その条件を達成するための戦略を作る

「相手チームに27個のアウトを取られる間に、相手より多く得点する」という条件を達成するための戦略として、マネーボールでは、「出塁すること」を重要戦略として位置づけていました。
理由は二つあります。
まず、野球において得点が入るルールをかなり単純化すると、「ある選手がバッターボックスからスタートして、塁を4つ進めることと」といえるからです(詳細は割愛)。つまり、塁に出ることができれば得点への期待値が上がり相手より多くの得点を取れる可能性も高まります。
次に、塁に出ることは、「アウトにならないこと」と同義だからです。野球にとってアウトは試合終了までのライフポイントのようなもので、そのライフポイントを減らさないようにすれば得点の機会が増えます。
このような理由から、出塁することが重要戦略となっていました。

3. 制約条件を加味した上で、その戦略に紐づくKPIを定める

マネーボールでは、選手を評価する際のKPIとして、出塁率(打席に立った際に、安打、四球、死球で塁に出る割合)を置いていました。出塁率が高ければ、守備や走塁といった他のスキルが低くても高く評価しスカウティングをしていました。
これにも理由は二つあります。
一つ目は、出塁することを重要戦略と位置付けている中で、出塁能力が最も現れるのが出塁率だからです。
二つ目は、出塁率が高いが他のスキルが低い選手は他球団からの評価が低くなり、安い給料でも雇用することができたからです。これには、マネーボールのモデルになったアスレチックスは、他球団と比較して資金が乏しいという制約条件が関わっています。アスレチックスは資金が潤沢になかったため、走攻守揃った出塁率の高い選手を多く集めることができませんでした。その代わり、出塁率以外のスキルがやや劣りますが、出塁率は高い選手(=給料が低い選手)を評価する方針を取っていました。
このように、制約条件を加味した上で、戦略に紐づいてKPIは設計されていました。

まずは、勝利条件を認識することから

勝利条件を認識する重要生は、堀井雄太(@yutadayo)さんのこちらの資料でも触れられていました。

勝利条件を認識せずに設計したKPIに基づいた行動は、レバレッジの効かないものになってしまいます。
例えば、店舗型フィットネス事業をWEBマーケティングで伸ばそうとした場合、勝利条件が「商圏エリア名×整体の検索クエリで自然検索1位を取る」ことではなく「指名検索数を他社よりも多くする」ことかもしれません。
ここを見誤ると、全ての施策が上滑りしてしまいます。
勝利条件をいきなり全て認識することは難しいかもしれませんが、できるだけ早く認識できるように準備段階で3C分析をしっかりと行う必要性を感じました。

まとめ

今回は、KPIを設計する前の「勝利条件を認識した上で、戦略を立てる」ことの重要性をまとめてみました。
もっと具体的で精度の高いKPI設計方法は、下記の素晴らしいnoteや書籍をご参考ください。

\  share  /