皆で遠くに行くためにー『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川元一著

『他者と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇田川元一著)

他者と働くことは難しい

一人の力で出せる成果には限界があり、大きな成果を出すためには、他者と協力する必要があります。
他者と働く時、私は常々その難しさを感じます。
報連相や調整、説明などの際に、業務に関する前提知識や生活環境が違うことを踏まえてコミュニケーションをする必要があるからです。
また、このコミュニケーションに失敗すると、自分の真意が伝わらず、相手にストレスを与えてしまい、仕事を円滑に進めることができなくなってしまいます。
こういったことをこれまで何度も経験してきました。

そんな状況の中で、エポックメイキングな本がありました。
それが、『他社と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇田川元一著)です。
久しぶりに読み返してみたところ、改めて勉強になる部分が多かったため、この記事でまとめていきます。

勉強になった点

  • 見えない問題、向き合うのが難しい問題、技術で一方的に解決ができない問題である「適応課題」を解くために必要なスキルが「対話」
  • 人間同士の関係性は、二つに分けられる。一つは「私とそれ」。もう一つは「私とあなた」。
    「私とそれ」:向き合う相手を「道具」のようにとらえる関係性のこと
    「私とあなた」:相手の存在が代わりが利かない、と思えるような関係のこと。理想的な他社との関係性
  • 実行フェーズの時には「私とそれ」の関係性の方が機能することもあるため、この関係性が悪いわけではない。
  • 「私とあなた」への関係に移行するためには、「相手を変える」のではなく自分が変わる必要があると考えることがスタートライン
  • 人それぞれナラティブ(解釈の枠組み)を持っている。
  • お互いのナラティブにある溝をみつけて、その溝に橋をかけることで、「私とあなた」の関係になれる。
  • 溝に橋をかけるための4ステップ
    • ①溝に気づく
      自分のナラティブを脇に起き、ナラティブに溝があることに気づく
    • ②溝の向こうを眺める
      相手の言動や状況を確認し、溝の位置やナラティブを探る
    • ③橋を設計する
      橋がかけられそうな場所やかけ方を探る
    • ④橋をかける
      実際に行動に映す

他者の立場に立って考えられるようになるための取り組み

本書で得たエッセンスの中で最も重要だと思ったことは、「社内、社外問わず、うまくコミュニケーションが取れない時にまずやるべきは、自分の立場を一切捨てて、他者の立場に立って考えること」です。
では、他者の立場に立って考える上で、他者のどんな点を注視するといいのでしょうか。
例えば、このあたりを注視すると、他者の思考の源泉に触れることができるため、他者の立場に立ったコミュニケーションが取りやすくなるのでは?と私は考えています。

  • 人生の優先事項
    • 仕事でなんとしても結果を出したい
    • 私生活の充実度が重要で仕事はそこそこでOK..等
  • 仕事上の優先事項
    • リスクと取ってでも大きな成果を出す
    • 大きなリスクは取らずにそこそこの成果で十分..等
  • 性格
    • 細かいことが気になる
    • 具体的に何をやればいいかわかれば愚直に実行できる..等
  • 生活状況
  • 人生経験

そのために、他者との会話量を増やすことが大切だと思います。
その会話の中で、仕事以外の話も積極的にして、相手の考えていることを読み解くヒントを得られるようにすると良いと思います。
もちろん、プライベートには踏み込みすぎないように注意です。
仕事以外の話をする際には、相手から不信感を抱かれないように、「今後、良いコミュニケーションを取るために聞きたいんですが〜」といった切り出し方をするといいかもしれません。

他にも、色々な立場の人の思考を知るために、良質な小説、漫画、ドラマや映画などのコンテンツに触れることも有効だと思います。
たとえコンテンツ自体がフィクションだとしても、そこに登場する人間の感情はノンフィクションです。
フィクションだからと言って侮らずに「こういう状況に置かれた人は、こんな言動をするんだ」という感じで、他者の理解に努めると良いと思います。

他者を理解しようとする姿勢を持ち続ける

早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行けと言うことわざにも現れているように、他者と働くことのレバレッジはとてつもなく高い。
難しさを乗り越えて、大きな成果を出せるように、これからも試行錯誤を繰り返していきたいと思います。

最後に、本書の中で一番響いた文章を引用して、終わりにします。

私たちはお互いに理解し合えない苦しみ、他社に見せられない痛み、それを語ることができない寂しさを抱えて、今の企業社会に生きている。
たからこそ、そのことに向き合って、新たな人間関係を築いていく入口に立っている。

他者を100%理解することはおそらくできませんが、理解しようとする姿勢を持ち続けることはできます。

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