2020年9月コロナ禍真っ只中、2年半勤めた国家公務員(国税専門官)の仕事をやめて、WEBマーケティング会社に転職しました。この経歴を人に話すと、なぜ公務員を辞めたのか聞いてもらえることが結構あるので、その頃の振り返りを兼ねて、公務員を辞めた理由をまとめました。
まとめると、「将来が見えすぎて、誰かの役に立っている実感もなく退屈だったから」になるのですが、どうしてそう思ったのか詳細を書いています。
この記事が「公務員から別業種に転職しようとしている」方の参考になれば幸いです。
目次
これが一番大きな理由だと思います。私が配属された部署には、私のような20代から60代まで各年代の人たちがいました。飲み会や雑談などで、仕事からプライベートのことまでよく聞いていたのですが、30代以上で家族がいる人は皆同じような悩みを抱え、同じような生活を送っていました。例えば、家のローンや職場に対する愚痴、同僚職員の噂話など。
そんなある日、ふと考えました。「これだけ同じ話をしている人が多いのであれば、もしかして自分もそうなる可能性が高いのでは?」と。配属先によりますが、ほぼ定時で退勤できる職場環境。厳しくもなく、かと言って優しいわけではない先輩や上司。年齢によって自動的に上がっていく役職。決まりきったレール。ルール。その行き着く先のビジョンが見えすぎてしまいました。
展開がわかりきっている小説を読むことほど退屈なことはありません。将来のビジョンを思い描くことは大切ですが、私にとってそれが見えすぎてしまうのは退屈で不幸なことでした。
私の仕事の内容は、個人事業者に対して税務調査を行い、適正な納税がされているかを確認することでした。もちろん、適正に納税されていない事業主には追徴課税をかけたり、悪質な脱税をしている事業主には加算税をかけたりします。世間からのイメージ通り、誰かから歓迎される仕事ではありません。誰かの役に立っているという実感が得にくい仕事です。
にもかかわらず、クレームを受けたり、冷たい目で見られたりすることが多い。クレームを受けたり、冷たい目で見られたりすることが多くありました。私が働いている時には、「税金泥棒が!」なんて言う人はいませんでしたが、まぁ近いことを言われた記憶があります。
「税金の徴収は間接的には誰かの役に立っている。道路も街の公共施設も税金で作られている」。そう自分を納得させようとしてきた部分はありますが、普段の仕事からそのように実感することはなく、腹落ちしないまま、日々が過ぎていきました。
私は仕事に「誰かの役に立っている実感」が欲しいと思う人間でした。大学卒業後、実際に働き始めてわかったことです。お金は大事ですが、それだけではしゃんと働いていられませんでした。
公務員の仕事はメンタルが安定していました。
安定しすぎたと言っても過言ではありません。民間企業だと、普段の雑務の他に新規商談や社内プレゼンなどで、緊張や適度なストレスを感じるイベントがあると思いますが、公務員はそれがほぼありませんでした。
確かに、税務調査の際は緊張しますが、ノルマがあるわけではないので、特段気合いを入れたり、失敗したらどうしようなどと考えたりすることはありませんでした。しかも、私が在籍していた時は、そう何度も税務調査はなく、一定期間の1ヶ月に1回あるかないかくらいの頻度でした。
このように働いていると日常にメリハリがなくなってきます。
昨日も今日も明日も同じ仕事をして、定時に帰る。そんな生活を送っていました。公務員に主に求められるのはそういった仕事かもしれません。しかし、だんだん生きてる感が薄れていきます。
自殺願望が芽生えだすわけではないのですが、「生きてるなぁ」と感じることが少なくなっていきました。同僚の中には、趣味や遊びに時間をかけるようになる人もいます。ただ、私は元来根暗で、どこかへ出かけるよりも、家で本を読んでいた方が楽しい人間でした(いつもそういうわけではありません)。特に遊びをするわけではなかったので、生活にメリハリが生まれず「生きてるなぁ」と思うことがどんどんなくなっていきました。
私の場合、仕事を含めた生活の安定と心身の安定に関係はないことがわかりました。
生活の安定は、バランスボールの上の安定のようなもので、極力動かずに同じ状態で居続けることで得られるものです。
一方、心身の安定は、自転車のようなもので、常に走り続けたり道に合わせて走り方を変えたりすることで得られるものだと思いました。
つまり、生活の安定を求めすぎて、変化が全くないと、心身が安定しなくなってしまう。私にとっては、ほどよい不安定が生活と心身を安定させるものだとわかりました。
公務員は、フィットする人にとってはとてもいい職場です。安定感は日本でトップクラスですし、箔もつきます。家族からも喜んでもらえます。また、転職するにしても、「前職が公務員です」といえば、高確率でまともでまじめな人と思ってもらえます。しっかりと退職金ももらえます。
要は、多くの人におすすめできる職場ではあります。
しかし、過去に何かに打ち込んだことがある人。「誰かの役に立っている」と強く実感したい人。これからも仕事に打ち込みたい人。そんな人にはあまりおすすめできません。
私の経験が少しでも誰かの意思決定の一助になれば嬉しいです。